こんにちは!作業環境測定士の皆さん、あるいは工場の衛生管理担当の皆さん。
化学物質の発散を抑えるための「局所排気装置」や「プッシュプル型換気装置」、正しく設計・管理できていますか?
労働安全衛生法では、有害な化学物質を取り扱う現場にこれらの装置を設置することが義務付けられています。しかも、設置工事を始める30日前までには、所轄の労働基準監督署に「機械等設置・移転・変更届」とあわせて「摘要書」を提出しなければなりません。
この摘要書を埋めるために絶対に避けて通れないのが「設計計算(圧力損失や静圧の計算)」です。
一見難しそうな計算ですが、根底にあるのは物理の教科書で見た「ベルヌーイの定理」。今回は、なぜこの計算が必要なのか、そして計算の仕組みを分かりやすく解説します!
局所排気装置の設計プロセス:まずはここから!
設計計算はいきなり圧力の計算から始まるわけではありません。以下のステップ順に進めていきます。
- フードの型式を決める(囲い型、外付け型など)
- 法令で定められた「制御風速」をもとに、「必要排風量」を計算する
- ダクト内の「搬送速度」から、運動エネルギーにあたる「速度圧(動圧)」を計算する
- これらをベースに、ダクトの曲がりや長さによる「圧力損失」を考慮した設計計算を行う
この「圧力損失」を考えるベースになるのが、次に紹介するベルヌーイの定理です。
ベルヌーイの定理と3つの「圧力」
ベルヌーイの定理とは、一言でいうと「流体が流れるとき、摩擦などのエネルギー損失がなければ、どこでも全エネルギーの総和は一定である」という法則です。
これを空気の「圧力」に置き換えると、次の3つの和が常に一定(=全圧)になります。
全圧 = 静圧 + 速度圧 + 位置圧
3つの圧力をイメージで理解しよう!
- 静圧(せいあつ):風船を膨らませるような、周囲を押し広げる(または吸い込む)力。プラスにもマイナスにもなります。
- 速度圧(そくどあつ):空気の流れそのものが持つ運動エネルギー。常にプラスの力です。
- 位置圧(いちあつ):重力によるエネルギー。※局所排気装置の設計では、フードと排気口の高低差がよほど大きくない限り無視してOKです!
そのため、通常の局所排気装置の設計計算では、以下のシンプルな関係式を使います。
静圧 + 速度圧 = 全圧
圧力損失とファン選定のメカニズム
実際にはダクトの壁との摩擦や、ベンド(曲がり角)を通過するときにエネルギーが失われます。これが「圧力損失」です。
圧力損失は、それぞれの場所の「圧力損失係数 × 速度圧」で求めることができます。
2点間の全圧の差 = 圧力損失
空気の流れる[地点1]から[地点2]の間に圧力損失がある場合、以下の関係が成り立ちます。
[地点1の全圧] – [地点2の全圧] = 圧力損失
この関係を使って、フードからファン入口までの圧力損失を足し算(積算)していくことで、「ファン入口の全圧」が計算できます。そして、全圧から速度圧を引けば、「ファン入口の静圧(マイナス圧)」が求まります。同じようにして、ファン出口の静圧も計算します。
なぜこの計算が必要なの?ゴールは「ファンの選定」
ここまで複雑な計算をする目的は、ズバリ「適切な能力を持ったファン(送風機)を選ぶため」です。
ダクトの抵抗(圧力損失)に打ち勝って、フードで規定の制御風速をきっちり出すためには、どれだけの静圧に耐えられるファンが必要かを割り出さなければなりません。
ファンに求められる静圧(必要静圧)は、以下の式で求められます。
必要静圧 = ファン出口の静圧(プラス圧) – ファン入口の静圧(マイナス圧)
💡 ポイント
入口の静圧はマイナス値なので、引き算をすると結果的に**「入口静圧の絶対値 + 出口静圧の絶対値」**の足し算になります。符号のミスを防ぐために、実務では表形式の「局所排気装置計算書」を使うのが一般的です。
まとめ:作業環境測定士が設計計算を理解するメリット
設計計算のゴールは「正しいファンを選ぶこと」ですが、私たち作業環境測定士がこの仕組みを深く理解しておくことには、もう一つ大きなメリットがあります。
それは、実際の作業場で「風量が足りない」「吸い込みが悪い」といった問題が起きたときに、どこに原因(改善のポイント)があるのかを的確に見抜けるようになるということです。
- ダクトの形が急に細くなって速度圧が変わりすぎていないか?
- ベンド(曲がり)が多すぎて圧力損失が大きくなっていないか?
こうした視点を持てるようになると、測定だけでなく、一歩踏み込んだ現場への改善提案ができるようになりますよ!


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