はじめに
働く人の健康を守るために化学物質の管理について転換点を迎えています。
2021年7月に厚生労働省は「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討報告書」を公表し自律的な化学物質管理制度の導入を推進するとしました。
参考:職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書
ここでは大きな転換期を迎えた化学物質の管理について概要を説明していくと共に私なりの考えを記していきたいと思います。
まだ不明な点も多いと思いますがこれから随時更新していきます。
少し長い記事になります。
化学物質の管理を詳しく知りたい方はご覧ください。
これ以降の記事は以下のような色分けで区別していきます。
参考にしてください。
新しい用語や数値など
これまでの流れやポイント
個人的見解
時間がある方は、以下の解説もご覧下さい。
規制強化の限界へ
これまでは、労働災害が起きるたびに個別の規制物質が増えて規制が強化されてきました。
この規制強化による物質の追加も年30件程度です。
これでは追いつかないとのことです。
また規制物質を追加しても、規制対象外物質もしくは規制対象外濃度による変更が行われています。
有害性がない若しくは低い物質への変更だったらいいですが、有害性が分からない物質への変更には危険が伴います。
後で有害性が分かって健康障害が出るということがよくあります。
最近では1,2-ジクロロプロパンによる胆管癌などが有名です。行政と事業者はこの規制に関わるイタチごっこをそろそろやめる必要が出てきています。
参考:「印刷事業場で発生した胆管がんの 業務上外に関する検討会」報告書 化学物質ばく露と胆管がん発症との因果関係について ~ 大阪の印刷事業場の症例からの検討 ~ 平成25年3月
化学物質の障害の8割が規制対象物質
また、これまでは空気中に飛んでいる有害物質についての規制が主でした。
それだけではなく今後は、皮膚障害や目への障害についても対応が必要になってきています。
受け身の管理から積極的な管理に移行される。
対象になる物質のは?
対象になるのはSDSが交付されている物質になります。
リスクアセスメント対象物質と言われます。
現在は化学物質のリスクアセスメントで674物質が対象になっています。
この数を今後順次追加して、2,900物質に増やしていきます。
現在、特別則などで、規制対象とされているものは123物質程度です。
これが対象物質が大幅に増えます。
正直これだけ化学物質の数が増えると専門家に相談するしかないと思います。
ばく露限界値や調査方法がある程度確立されているものは少ないです。
今後どれだけこれらを確立されていけるかが課題かと考えます。
リスクアセスメントの義務付け対象物質が2900物質まで拡大される
どんな経緯で
以前から自律的管理の流れはありました。
2014(平成26)年6月に成立した改正労働安全衛生法などにより、2016(平成28)年6月1日から、全ての業種・企業規模において、化学物質を取り扱う事業場がリスクアセスメントを実施することが義務化されました。
全ての事業所において義務化の対象になっていました。
参考:厚生労働省-労働災害を防止するため リスクアセスメントを実施しましょう
ただし、実施していなくても罰則はなく労働基準監督署からの行政指導のみです。
この行政指導もあまり私は見てません。
とりあえず形式的に何かやっておけばいいという感じでした。
リスクアセスメントの罰則は設けられていませんが、実施すべき要件に該当する場合に実施していなければ法律違反になり、労働基準監督署の行政指導の対象となります
リスクアセスメントの実施状況は?
ただ、工場などの事業場はこれまで作業環境測定を実施していた経緯もあり積極的に実施していた印象はあります。
積極的な事業場からは問い合わせや依頼もありました。
ほとんどが安全衛生の担当者が積極的にやるかどうかということですね。
大企業であればコンプライアンスの面から積極的になることがあるのですが中小企業だと予算の面で積極的になりづらい部分があります。
そのため、中小企業はあまり実施していた印象はありません。
参考:令和3年度厚生労働省補助事業厚生労働省によるリスクアセスメント指針(3指針)に関する研修等の実施状況と事業場における当該研修等の活用状況に関する調査研究報告書
小売業や建設業においても対象であったと考えますがその様な依頼はありませんでした。
但し、労働契約法第5条に安全配慮義務があります。
雇用者は労働者の安全と健康を守る必要があります。
この時に実施するのが化学物質のリスクアセスメントなどです。
労働契約法第5条-安全配慮義務が重要となる
今後の安全配慮義務は?
安全配慮義務は、国がやることと事業者がやることに分かれます。
今後、国はこの図にあるように、リスクアセスメント対象物質を決めて、 GHS分類やSDSなどの情報を事業者の方に提供致します。
化学物質の危険・有害性情報を公開ということになります。
この情報に基づいて事業者の方は、自社で使っている化学物質について、労働安全衛生法第57条の3に基づく、リスクアセスメントの実施を行ないます。
つまり法律の基でリスクアセスメントは義務化されております。
リスクアセスメントの結果、低減措置の実施が必要になります。
この低減措置に関しては、2種類あります。
ひとつ目としましては濃度基準値以下にすることリスクアセスメント対象物すべてに労働基準値が設定されるわけではなく、800から900物質に関して濃度基準値が設定される予定です。
このことから作業者がばく露される量を濃度基準値以下とすることが求められます。
これは実際に体内に取り込む濃度になります。
防護マスクの内側の濃度です。
2つ目としてなるべく低くなるようにする必要があります。
少し解釈が難しいな表現となっておりますがこれに関しては、 濃度基準値が設定されていない物質該当してくると考えます。
明らかに発がん性がある物質に関しては、濃度基準が設定されません。
また濃度基準値が設定されていなく海外のばく露基準値などを使用してする物質もあるかもしれません。
これらに関しては ばく露が最小限度となるようにする必要が出てきます。
これらが安全配慮義務として定められている、労働安全衛生法の最低基準になってきます。
こちらのオレンジの部分です。
自律的管理では 事業者の判断において 労働安全衛生法の努力義務の部分や事業場の特性に応じた自主的な管理これらも含めて管理して行ってほしいということになります。
この安全配慮義務は建築アスベストの最高裁判例においても、 事業者は、下請け業者にも適用するとなっております。
事業者は危険性有害性をしっかりと判断し、労働者の安全、健康を守る必要があります。
必要になること
これから必要になることは、化学物質のリスクアセスメントと資格者の専任になってきます。
これまでも化学物質のリスクアセスメントは義務化されていますしたが、さらに増強されるということになると思います。
これまで見過ごしてきたものが、それでは駄目だということになってきていると考えます。
資格者の選任ということで新たな資格がいくつか創設されます。それに対する対応が必要になってくると思います。それぞれの資格についての詳細は後述します。
- 化学物質管理者の選任義務化
- 保護具着用管理責任者の選任義務化
- 化学物質管理専門家からの確認及び評価
- 作業環境管理専門家への相談
内部で選任や外部の専門家を活用する必要が出てくる
事業者の義務
事業者はこれまで特別則などで指定された化学物質については作業環境測定を行ってきました。この時の管理区分が悪い場合は改善が必要とされてきました。
今後も同様に化学物質などの低減措置は必要となってきます。
その方法はこれまでの内容に準じて行われると考えます。それに加え化学物質管理体制も強化が必要になってくると考えられます。
ただこれについても複雑で高度となって来ています。
このため化学物質などの専門家が必要となってくるため、外部との専門家との連携が重要になってくると思います。
ただし本当の意味での安全衛生の専門家というのは数少ないと思います。
これまで事業と成り立ってきた作業環境測定など携わってきた方々は経験を重ねて、安全衛生に詳しくなってきています。
ただし安全衛生コンサルタントやオキュペイショナルハイジニストは事業としてなかなか成り立たない部分がありました。
今後、日の目を見るといいかなあと考えます。
安全衛生について意識をこれまで以上に高めましょう!
日常的な管理
日常的な管理の主な目的は化学物質の保管、表示及び化学物質リストと SDS の整備です。
化学物質には消防法や毒劇物取締法などにも対応する必要があります。
化学物の表示に関しては特に容器ラベルの表示について今後強化されていきます。
これまでも譲渡や販売時にラベルの表示が必要でしたが、今後は事業場内においても移し替え時に表示が必要になってきます。
例えば小さな容器に移す時は、内容を全て記載することができませんのでQRコードなどで示す方が良いのかもしれません。
これから事業場などは、保有している化学物質のリストなどを作る必要があると思います。もうすでに作ってあるところもあると思いますが今後は、SDS と紐付けするなど必要時にすぐ取り出せるようにデジタル化する必要が出てくるかもしれません。
こういった化学物質に関するデータベースインフラストラクチャーこれらをしっかり整備していかないとこれからの自律的な化学物質管理は成り立っていかないと考えられます。
SDS も随時更新されるためそれに応じた対応が必要になってきます事業所内において化学物質の管理をする担当者を設けることがこれからは必ず必要になってくると思います。例えば中小企業の場合専任の担当者を設けることができないかもしれませんが外部の専門家とコミュニケーションを取りながら対応していくことがどうしても必要だと思います。結局のところ安全衛生も事例などの水平展開が重要だということだと思います。そのため一度だけでは経験値が少ないため外部と連携していく必要があります。
今後、SDSは二次元コードをつまり QRコードで提供されることもあるため、積極的な確認が必要になってきます。また譲渡者には人体に及ぼす影響について5年ごとに確認することが義務付けられますので、 SDSの5年ごとに更新されることは考えられます。特に少品種を扱ってる事業所は良いですが、多品種を扱っている事業所は大変な作業となってくると思います。これらのことより専任者を設けるか、外部の専門家に相談するなどの体制を取っておく必要があると思います。
化学物質のデータベースを作成しよう
化学物質の専任者が外部の専門家に相談できる体制をとっておこう
化学物質のリスクアセスメント
リスクアセスメントとはリスクを評価することです。
対象化学物のハザードつまり危険性を同定してハザードの重大性その発生確率を組み合わせてリスクを見積もることです。
ハザードの重大性とは何かというと化学物質の場合は健康影響になってきます。発がん性があるものは健康影響が大きいですね。。逆に健康影響がないものに関してはハザードはないということになります。この時のハザードの大きさにばく露限界値というもの用います。
ばく露限界値がまだない項目もたくさんあります。今後設定されていく予定でいます。
ちょっとややこしいですが曝露限界値が小さいつまり濃度が低いほどは方がハザードが大きいです。
発生確率は何かと言うとばく露の量になってくると思います。暴露量が大きいほど健康影響の発生確率が高まってきます。ハザードが大きくても暴露がなければ健康影響はありません。
ばく露って何かって言うと化学物質にさらされることです。今の一般的な事業場では、ばく露は経気道曝露によるものが主に用いられております。つまり呼吸で体内に入ってくるものになります。
例えば呼吸用保護具を使用している場合はどうなるかと言うと、呼吸用保護具が100%有害物質を除去してくれていれば暴露はないということになります。ばく露はないということはハザード起きないということです。
ばく露はどうやって測るかと言うと個人にサンプラーを装着して測るような形になります。
個人ばく露濃度測定と言われます。この時の濃度を曝露限界と比較して評価します。
今、事業場で一般的に行われている作業環境測定は、その場所(空間)の評価になるためこの個人暴露濃度測定とは異なってきます。
作業環境測定の第一管理区分はマスクがない状態でその作業場所で働いていても病気にならない状態を示します。
働く人がマスクなしでも働ける環境を作りましょうということになってきています。
現在は作業環境を行っている9割の作業場がそのような状態になっています。
ちなみに作業環境測定におけるばく露限界値は、管理濃度が用いられております。
一方個人ばく露濃度測定については許容濃度というものが日本産業衛生学会において設定されております。
これらは、使い方が違いますので注意してください。
今後、ばく露限界値が設定されていないものについては、有害性の高いものから追加されるとのことです。
詳細は労働者健康安全機構労働安全衛生研究所化学物質情報管理研究センターに情報があるということです。SDS交付物質が増えていくことでしょう。
それに対応した化学物質のリスクアセスメントが行われていくことと考えます。
参考:管理濃度-公益社団法人日本作業環境測定協会
許容濃度等の勧告(2021年度) – 日本産業衛生学会
化学物質のリスクアセスメントの実施のポイント
物質や作業ごとに1回はリスクアセスメントを実施しましょう!
健康診断
特殊健康診断は緩和されるということです。
特定健康診断は緩和されないということです。よって特別有機溶剤及びその混合物は緩和されないということです
特殊健康診断と特定健康診断の違いは何かというと特定化学物質第1類及び第2類物質が特定診断におよそ当たると考えられます。
参考:特化則第39条
特殊健康診断は労働安全衛生法第66条第2項、3項に定められた健康診断でじん肺法第3条に定められた健康診断を含めて言います。
特定化学物質健康診断は法令で規定された化学物質を製造又は取り扱う業務の従事する従業員に対して雇入時配置換え時及び6ヶ月ごとに実施します。
健康診断結果は作業管理・作業環境管理の結果です!
責任者の任命
自律的管理を促すためにいくつかの責任者を任命する必要があります。
ここがポイントなのですが、この責任者は企業内で選任しなければいけないかと言うとそうでもなさそうです。企業内で専任して専属であれば望ましいのですが専門性が高いため企業外の人材を登用するという手もありそうです。
ただし専属で選任しないと適用除外が受けられないものもありますのでご注意が必要です。
化学物質管理者
2900物質にわたる化学物質について日常的な管理やリスクアセスメントを統括するものになります。
選任するためには以下の要件があります。
①リスクアセスメント対象物を製造している事業場
厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習を修了した者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者
②上記に掲げる事業場以外の事業場
上記に定める者のほか、第一項各号の事項を担当するために必要な能力を有すると認められる者
②の場合は、専門的な講習を修了した者が望ましいですが特に資格要件はありません。
参考:
労働安全衛生規則第12条の5第3項第2号イの規定に基づき 厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習等の適用等について
令和6年4月から選任する必要があります。
SDS の管理や労働者に使用方法の指示をすることが必要です。
基本的に内部の登用が望ましいですが外部でも可能ということです。
実際のところ専門的な知識がないままリスクアセスメントの実施を難しいと思います。
新機の化学物質を採用もしくは使用方法を変更したりする場合は化学物質のリスクアセスメントをしなければなりません。結局のところ外部の専門家に相談する必要があります。
保護具着用責任者
化学物質でリスクアセスメント行った結果、呼吸保護具が必要な場合にはこれらの管理責任者として保護具着用責任者を設けなければいけません。
どういった人を選任とするか?
特に資格要件はないようで、これまで作業主任者として活躍していた人たちを選任するとよいでしょう。
先にも述べましたが化学物質の管理には保護具着用は重要となってきます。ばく露限界値の低いものについては多くの着用が重要となってきます。
全体換気装置や局所排気装置のような工学的な対策では効果が得られない場合が多いからです。
現場においてもインジウムや溶接ヒュームにおいてはマスクで対応することが認められております。
今後作業環境測定においても第3管理区分の事業場においてはマスクで対応することが認められるようになります。但し個人サンプリング法の測定などの付加的な測定が必要になってくることがあります。
マスクの濃度から算出する使用時間の管理だけではなく装着具合の管理つまりフィットテストも重要になってきます。保護具着用責任者にはこれを管轄する仕事が必要になってくると思います。
化学物質管理専門家
労働災害が発生した事業所の管理状況の確認や管理状況の確認や、実施し得る望ましい改善措置に関する助言する。労働災害が発生した場合内部ではなく外部の専門家が望ましいとされている。
結局のところ内部の専門家では上層部からの圧力に負けやすいので外部に頼った方がいいと思います。当然内部に専門家がいた方が外部の専門家も手助けしやすいと考えます。これからは内部と外部の専門家がうまく連携してやっていくことが必要なのかなと考えます。
管理水準が良好事業場の特別則の適用除外を受ける場合に専任者が必要となっている。
ただし、この場合も外部の化学物質管理専門家は同時に必要となる
化学物質管理専門家というのは以下の要件があります。
結構、要件が厳しくて数が少ないじゃないかと考えます。また業務の従事や講習修了が必要なものもあるので注意が必要です。
個別規制の適用除外
個別規制とは特定化学物質障害予防規則や有機溶剤中毒予防規則、粉じん障害予防規則など物質ごとに個別に設けられていた規則です。
これまではこの規則の中に該当する物質があれば細かな縛りが規則の中で定められていました。
これからは、行政の管理・規制ベースからリスクベースに管理を移行していくということです。
更新をしないということになると思います。
ただこの個別規制が本当になくなるかどうかはまだ決まっておりません。
リスクベースの管理と言うとものすごく曖昧になってくると思います。
ある程度を規制で縛られていた方が日本人の気質としては管理しやすい側面もあります。
これまでも帰省ベースである程度の縛りがあったものに対しても遵守されていない事例も多々あります。
化学物質のリスクアセスメントの事例を見ても義務化されているにも関わらず現場の私としては実施されている数は非常に少ないと感じております。
労働安全衛生法の本来の目的は労働者の健康保護ですのでその目的がしっかりと達成させるようにある程度の監視は必要になってきます。
今後は個別規制とリスクベースの管理の両方が行われていくことを望みます。
一般則での準用
特別則がなくなり一般則へ集約されるかもしれないとのことです。
個別の化学物質の規制がなくなるというのは非常に不安なことだと思います。
シアン化合物やクロムなどこれまで個別に具体的な取扱い方法を規制しているものは過去の経験が大分積み上がってきていると思います。
これらを過去の取り扱いの仕方をベースに類似物質の管理が行われていくものと考えられます。現状ではおそらく一般則で全ての項目を準用するのは難しいと私は考えます。
ただし、いずれにしてもこちらでの運用の話は、まだ先の話になります。
適用除外要件
化学物質管理の水準が一定以上であると所轄労働局長が認定した事業場について、特化則、有機則、鉛則、粉じん則の個別規制の適用を除外し、リスクアセスメントに基づく自主管理によることができることとされました。(認定は規則ごと、3年ごとに必要。)とされています。
具体的な認定要件は以下のようになります。
専属の化学物質専門家が必要
化学物質管理専門家が専属で会社内に配置されていることが必要となってきます。
これが最もハードルが高いんじゃないかと考えます。
この条件を基に以下の要件が追加されます。
過去3年間について
上記の要件をクリアするのは、結構大変なんではないかなあと考えます。
健康診断
特殊健康診断の実施頻度の緩和がされるとのことです。
事業所の判断で、6か月以内毎に1回から1年以内ごとに1回に緩和できることとされました。
特殊健康診断は緩和される
特化則、有機則、鉛則、四アルキル鉛則の特殊健康診断の実施頻度のことです。
緩和要件は以下のようになります。
- 当該労働者が業務を行う場所の直近3回の作業環境測定結果が第一管理区分であったこと
- 直近3回の健康診断の結果当該労働者に新たな異常所見がないこと
- 直近の健康診断実施後に軽微なものを除き作業方法の変更がないこと
上記の1から3をいずれも満たすこととなっております。
四アルキル鉛則については2、3を満たすことが必要です。
特定健康診断は緩和されない
特定健康診断とは特定化学物質を扱う場合に対象となる。
健康診断ですこちらは緩和されないとのことです。
作業環境測定
作業環境測定の結果、第3管理区分に区分された場合は規制が強化されます。
作業環境測定において第3管理区分に区分された場合は、これまでも第1管理区分か第2管理区分になるようにしなければなりません。
しかしこれができない場合に以下のことを行うようになります。
- 改善できない場合は外部の作業環境管理専門家に意見を聞くこと
- 改善措置を実施して改善効果を確認すること
- それでも改善できない場合は、呼吸用保護具による暴露防止対策の徹底を図ります。
作業環境管理専門家の意見聴取
第3管理区分事業場の措置強化(特化則第36条の3の2、有機則第28条の3の2、鉛則第52条の3の2、粉じん則第26条の3の2)令和6年4月1日施行されます。
今でも第3管理区分の作業場は第2第、第1管理区分に改善することが求められます。
しかし第3管理区分が恒常的になっている作業場があります。
工程や費用面などでなかなか改善できない状況です。
この状況を放置せずに保護具等をして労働者を守ることが求められてきます。
局所排気装置等の設置によって環境の改善をするのが望ましいのですが、なかなかそれが難しい事業場に対してはこのような措置が取られます。
そのような認定のために作業環境管理専門家の意見を聞くことが必要とされています。
特化則、有機則、鉛則、粉じん則に基づく作業環境測定の結果、第三管理区分に区分された場合に意見を聴くこととされる、外部の「作業環境管理専門家」の要件は次のとおりです。
参考:認定オキュペイショナルハイジニスト名簿
作業環境測定インストラクター名簿
労働衛生コンサルタント会
改善措置の実施及び改善効果の確認
改善可能な場合は改善を実施して、濃度を測定し結果を評価します。
これまでもやってきたことだと思います、
管理区分の改善困難な場合
改善措置を実施しそれでも改善できない場合は、呼吸用保護具による暴露防止対策の徹底が必要となってきます。
ここからが今回の新しい部分かと考えますこれまでは改善を継続的に実施しなければいけませんでした。
しかし第3管理区分から改善することができない作業場が1割程度あると考えます。
その作業場など耳栓着用で対策できるものもあります。
今回は呼吸用保護具で対策することが盛り込まれております。
呼吸用保護具によるばく露防止の徹底
- 個人サンプリング法等により濃度測定し結果に応じて有効な呼吸保護区を使用させる。
- フィットテストにより適切な装着を確認する。
- 呼吸管理責任者を選任し呼吸保護具に関する管理指導呼吸用保護具の有効清潔保持等を行わせる。
- 作業環境管理専門家の意見の概要、改善措置前後の評価結果を掲示、書面交付等により労働者に周知する。
- 講じた措置の内容労働基準監督署に届出する
第3管理区分の作業は改善されないことが多いのでこういった措置が有効かもしれません個人サンプリング測定等ですので個人ばく露濃度測定でもいいのかもしれませんね。但し、今後は個人ばく露濃度の測定者にも資格要件が付されるかもしれません。個人ばく露濃度測定とひとことで言っても以下の図のようにいくつも種類があります。
個人ばく露濃度測定の結果によって保護具を選定するため、測定精度の担保が重要になってきます。その理由は下記の通りです。
- 個人ばく露測定の結果から呼吸用保護具を選定するため
- ばく露の程度が濃度基準値以下であることを確認するため
- 濃度基準値が低い物質もある
測定精度が担保出来ないと本来の目的である健康障害を防げないことになります。
参考:「化学物質管理に係る専門家検討会」の中間取りまとめを公表します
1 労働者のばく露が大臣の定める基準(濃度基準値)以下であることを確認する測定(確認測定)等について
2 個人サンプリング法による作業環境測定の今後の在り方について
最後に
今回の改正は非常に大きなものと考えます。
これまで培ってきた安全衛生作業環境測定とを土台にして事業者が多様化する化学物質に対して自発的に行動することは有効かと考えます。
また管理区分の悪い作業所についてもマンネリ化した管理だけではなく呼吸保護具というものを主体にした管理を行うことは健康管理上でも重要かと考えます。
ただし、これを行うためには、相当程度の専門知識が必要となるため、安全衛生を行う人の人材育成の重要となってきます。
私も情報発信をして、経験や知識など共有していきますのでよろしくお願いします。
最後まで読んで頂けた方、ありがとうございます。
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