はじめに
2023年4月からフィットテストが義務化されます。
溶接ヒュームのマンガンのばく露防止のために防塵マスクなどの呼吸用保護具が使用されます。
これまでは局所排気装置などの工学的対策などを行った上での最終手段としての呼吸用保護具でした。
今回は局所排気装置対策が品質上好ましくないとのことで、呼吸用保護具での対応となっています。
今回はこのフィットテストについて解説して行きます。
法律的には?
溶接ヒュームのマンガンばく露防止のための呼吸用保護具を選択した場合は、2023年4月から年1回のフィットテストが必要になります。
特定化学物質障害予防規則
金属アーク溶接等作業で発生する「溶接ヒューム」へのばく露による労働者の健康障害防止のため、改正特定化学物質障害予防規則(「以下「特化則」」に基づき、新たに呼吸用保護具が適切に装着されていることの確認(以下「フィットテスト」)が定められました。
フィットテスト実施者とは?
資格や教育の内容は?
フィットテストの実施に当たっては、フィットファクタの精度等を確保するため、十分な知識及び経験を有する者(以下「フィットテスト実施者」)が実施することが求められています。
誰が行うことになるのか?
但し、フィットテストはフィットテスト実施者が毎回実施する必要はなく、フィットテスト実施者に教育を受けた人が実施しても良いことになっているとのことです。
フィットテストの教育は以下のものがあります。
フィットテスト実施者に対する教育の実施について(基安化発0406第3号 令和3年4月6日 厚生労働省労働基準局 安全衛生部化学物質対策課長)
実際何をするのか?
実施者は以下のことを実施する必要があります。
フィットテストの規格
フィットテストの方法を定めた日本産業規格T8150(呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理方法)が改訂されています。
マスクの性能ではない?
フィットテストとは密着性を評価するものです。
装着する人の顔のサイズ、形状、装着状態が適切であることを確認して、自分の顔面に最も適した呼吸用保護具を選択し、正しい装着をしているかどうかの確認テストです。
マスク本体の性能の検査ではありません。
性能基準についてはマスクの種類を参考にして下さい。
合否の判定は要求フィットファクタにより行われます。
防じんマスクにも種類がありその形状により、フィットテストの方法や基準も異なります。
要求フィットファクタとは?
要求フィットファクタとはフィットテストの合否判定に用いられる数値です。
面体の種類によって異なってきます。
例えば半面形の面体の防じんマスクを着用してフィットテストを行った場合について説明します。
外側の大気粉じんのカウント数は100個、内側のカウント数が5個の場合
100÷5で20となりフィットテストは不合格となります。
つまり5%の漏れがあったということを示します。
※測定対象物質とは大気粉じん等を示します。フィットテストの機器では塩化ナトリウム等になります。
評価のポイント
評価のポイントは2つです。
○マスクの型式とサイズが適切であるか?
○適切に装着されているか?
テストの種類は2種類ある
フィットテストには2種類あります。
必要な要求フィットファクタに応じて選択する必要があります。
要求フィットファクタを0か100で判断する定性的フィットテストと要求フィットファクタを数値化する定量的フィットテストです。
合格しない場合は、面体のサイズ/種類を変更、他の呼吸用保護具を選択する。
今後の見通し
溶接ヒュームのマンガン濃度だけではなく、今後は第3管理区分の作業場についてもフィットテストが導入されていく見通しです。
作業者のばく露濃度低減のためには良い方向性かもしれません。
ただしフィットテストの正確性についても課題が残ると考えられます。
フィットテスト実施者が正しく測定を行うにはそれなりの技術が必要なのかもしれません。
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