【労災事例】染料中間体製造労働者における膀胱がんの多発(皮膚吸収)

労働環境

はじめに

今回は化学物質は自律的管理で経皮吸収のきっかけとなったであろう労災について説明していきます。
日本の労働安全衛生法は、過去の労働災害の犠牲者の上に成り立っております。
これからの化学物質管理は、今後労働災害を出さないためにも重要となってきます。
過去の歴史を学んで今後に生かすことを行っていきましょう。

経緯

染料中間体製造労働者における膀胱がんの多発になります。
こちらはo-トルイジンが原因物質となっています。
芳香族アミン類に関しては、昔から発がん性が疑われておりました。

1985年にドイツの染料工場で、膀胱がん癌が発症しております。
原料はアニリンです。
中間体としてナフチルアミンとベンジジンがあります。
その世界各国で膀胱がんの事例が報告されております。
1938年にβ-ナフチルアミンの発がん性が 犬への長期期間投与によって決定的となりました。
1940年頃には日本でも労働者4名の労災の報告があります。
1972年には 特化則でβ-ナフチルアミンとベンジンの製造、使用禁止が定められました。
これらの物質は1975年以降製造禁止物質となりましたが、発がんまでの潜伏期期間が1年から45年と流れため 禁止されて以降も422件の労災認定がされております。

化学物質の構造に注意する

構造式は次の様になります。

こちらが構造式になります。
ベンゼン環にアミン類が付いた形になります。
名前が似ていますが、o-トリジンも製造許可物質となっています。


この物質は密閉化、局所排気装置の設置、作業環境測定、特殊健康診断が定められております。
O-トルイジンに当時は同様のものは、定められておりませんでした。
現在は改正されております。

以下年表形式です。

1985年-職業性膀胱がんの発見
 ドイツの染料製造工場で膀胱がん
 原料はアニリン
 中間体はナフチルアミンとベンジジン
1905年
 スイスの染料製造工場で膀胱がん
1914-18年
 英国、米国、ソ連、伊国でも報告
1938年β-ナフチルアミンの発がん性
1940年-日本でも労働者4名の報告
1972年-特化則改正で製造・使用禁止
(β-ナルチルアミンとベンジジン)
1977年-o-トルイジン発がん性評価
 2008年グループ1へ
2015年-染料・顔料中間体製造工場
 40名中5名が膀胱がんを発症
 o-トルイジン(グループ1)
 o-アニシジン(グループ2B)
2016年12月-検討会報告書

空気中濃度は低い?

災害調査において実施されたガス状オルト-トルイジンの個人ばく露測定とオルト-トルイジンの尿中代

謝物の測定から、高濃度ばく露が疑われる作業と個人ばく露の程度との間に合理的な関連性は認められなかったとしています。
一方で、尿中代謝物が高値を示した労働者は、終業後に作業で使用していた手袋を蒸留有機溶剤で洗浄していたことから、労働者のゴム手袋に付着していたオルト-トルイジンの総量と尿中代謝物の関係を確認したところ、相関傾向が得られたとしており、オルト-トルイジンの経皮ばく露による生体への取り込みが示されました。

労働者のゴム手袋からの経皮吸収による生体取込

このようなことから経皮吸収についても配慮が必要とされました。

最後に

今後は、経皮吸収についても配慮が必要になってきます。
新しく新設される保護具着用管理責任者の仕事として、マスクや手袋の選定、管理、保管は重要な仕事となってきます。
空気中の濃度の管理だけではなく、生体取り込みに関してもしっかりと配慮していく必要はあります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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