自然界に存在するフッ素

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Natural-fluorine

はじめに

地下水の検査や土壌汚染対策法で検査を行うとフッ素化合物が環境基準値や土壌汚染対策法の溶出量基準値などをを超えていたりすることがあります。

このことについて今回は考えていきます。

この記事のポイント

自然由来と人為的な要因によるフッ素の汚染てあるか区別ができるようになる

身近に利用されるフッ素

虫歯予防のためのフッ素

フッ素は食事などで口内が酸性となった時に歯からカルシウムが溶け出すのを抑制し虫歯を予防します。

石灰化の促進効果を持つため歯磨き粉に含まれています。

アイルランドやアフリカの一部自治体では虫歯予防のために水道水にフッ素を添加しているが安全性への懸念から近年減っているそうです。

これをフロリデーションと言うそうです。

フッ素樹脂加工されたフライパン

フッ素樹脂をコーティングした調理器具は水や油をはじくため今月には少なく汚れを洗い落とすのに手間がかからないなどのメリットがあります。

近年フッ素樹脂加工されたフライパンに利用された有機フッ素化合物が 問題となっております。

自然由来のフッ素の原因

基礎データ

自然界のフッ素 フッ素(F)はハロゲン族元素の一つです。

ハロゲン族元素とは、フッ素・塩素・臭素・ヨウ素・アスタチン・テネシンが該当し、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と典型的な塩を形成します。

主な化合物とすれば以下のものが挙げられます。

アルカリ金属とは、周期表第Ⅰ族元素のうち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムの6元素です。

アルカリ土類金属とは、周期表第II族元素のうち,カルシウムCa,ストロンチウムSr,バリウムBa,ラジウムRaの総称。 ベリリウムBe,マグネシウムMgをこれに加えることもあります。

参考:周期表

自然界のフッ素

このため、フッ素は自然界には遊離の状態では存在せず、ほとんど安定した化合物で存在しています。

自然界のフッ素は、人間の産業活動の排出物を除けば、その全てはマグマに由来しています。

花崗岩などに由来している場合もあります。

フッ素は“自然物”であり、自然界にあまねく存在し、また我々人間の生体とって“必須微量元素”です。

自然由来のフッ素の原因は?

マグマに由来している。

自然由来のフッ素はマグマに由来している

反応性の高いフッ素

フッ化水素は半導体の製造などに欠かせないフッ素化合物です。

フッ化水素酸(フッ化水素の水溶液)はガラスを溶かしてしまうのでポリエチレンやテフロン容器に保存する必要があります。

ホタル石に濃硫酸を加えて加熱するとフッ化水素を得ることができます。

アフリカの水問題

アフリカではフッ素に汚染された地下水などを引用している人々がいるいます。

アフリカのタンザニアのアルーシャ州のマサイ族がレマンダ村です。

飲料水に含まれるフッ素の WHO基準値は、1.5 ppm 以下ですが、この村のフッ素濃度は、通常でも10 ppm汚染がひどい時では20から40ppmに達しています。

ちなみに日本の環境基準値及び水道水の基準値は0.8ppm です。

参考:環境省-水質汚濁に係る環境基準

参考:厚生労働省-水質基準項目と基準値(51項目)

工場、事業場の排水に適用される水質汚濁防止法の排出基準値は8ppm (海域は15ppm)です。

参考:一般排水基準

参考:フッ素の場合、海域には環境基準が適用されません。理由は、海域において自然状態での濃度で環境基準値を既に超えており、その物質の存在がもともと海そのものの性状であるためです。

自然的要因による汚染とその判断根拠

自然的要因による汚染については、周辺の金属鉱床等に含まれる元素又は化合物に該当し、かつ調査地点における汚染物質に因果関係が認められること、また、調査地点周辺において汚染物質の使用履歴や不法投棄等が見当たらないこと等を確認した上で、専門家の助言を得て総合的に判断することが望ましいとされています。

金属鉱床とは、地質現象によって、人類に有用な元素、鉱物,岩石などがとくに濃集したところを鉱床というそうです。これは熱水によって金属元素が運搬され、あるところに 沈殿・濃集することで鉱床が形成されます。

フッ素については、以下の知見があります。

引用

フッ素汚染原因究明のため,汚染地区近くの採石場で花崗岩等を採取したところ、高濃度のフッ素を溶
出する石が見つかった。この石についてX線解析を行った結果ホタル石(CaF2)が含まれていることがわかった。このことから地下水フッ素汚染の原因は地下花崗岩層にホタル石を含む鉱脈が存在しフッ素が地下水に溶出している可能性が高いと考えられた。

引用:地下水のフッ素汚染源と推定される鉱石の分析

ホタル石とは、鉱物の一種で、主成分はフッ化カルシウム(CaF2)です。

天然に産出する蛍石は、その含まれる不純物によって緑、紫、ピンクなど様々な色合いを持つ美しい鉱物とのことです。

前述の通りホタル石に濃硫酸を加えて加熱するとフッ化水素を得ることができます。

参考:蛍石

海水中のフッ素濃度

海水中には約1.3ppm(太平洋:1.2ppm,大西洋:1.4ppm)のフッ化物が含まれています。

一般に河川水のフッ化物濃度は低く,0.1ppm以下ですが,地下水では地質の関係で比較的高い地区があり,ヒトにとっての適正濃度をこえる場合もあるとのことです。

環境省からも以下の様な通達が出されています。

参考:環境省-汽水域等における「ふっ素」及び「ほう素」濃度への海水の影響程度の把握方法について

日本での基準値

フッ素の基準値としては以下のものが設定されています。

環境基本法の地下水の水質汚濁に係る環境基準

人為的要因による水質悪化防止を目的として、人の健康保護と生活環境保全のために維持することが望ましい基準(環境基準)として1997年に設定された。

フッ素を含む28項目が設定されており、年間5,000件程度の井戸で調査を行っている。

この中でフッ素の基準値は0.8mg/L以下として定められています。

地下水の環境基準値

ふっ素 0.8mg/L以下

参考:地下水の環境基準値

参考:環境省-地下水の水質汚濁に係る環境基準について

参考:環境省-地下水質測定結果

令和元年度調査では3,191本の井戸を調査し、191本の井戸においていずれかの項目で環境基準を超過していました。この内フッ素は1.0%で環境基準を超過していました。

過年度と比較するとこの30年ぐらいは、環境基準超過率は1%弱(0.4~1.2%)で推移しています。

令和元年度の概況調査(他に汚染井戸周辺地域、継続監視調査)では、151本調査した熊本県で13本の超過が最大でした。

土壌汚染対策法

土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的として設定されています。

参考:環境省-土壌汚染対策法

この中でフッ素の基準値は以下の通り定められています。

土壌汚染対策法の基準値

ふっ素及びその化合物

・土壌溶出量基準値 0.8mg/L以下

・土壌含有量基準値 150mg/kg以下

・地下水基準値 0.8mg/L以下

フッ素の溶出量は以下の傾向となっています。

フッ素溶出量は、火成岩、火山性堆積岩、堆積岩、堆積軟岩の各試料の1~4%で基準超過が確認された。

水質汚濁防止法-温泉排水に対するほう素、ふっ素の規制

特定施設として以下の様に規制されています。

しかし、一律排水基準に対応することが困難と認められる業種に係る特定事業場に対しては、経過措置として、3 年間(平成 16 年 6 月 30 日まで)に限って適用する暫定的な排水基準(以下「暫定排水基準」という。)を設定している。これは、現在も延長されている。

ふっ素の排水規制

ふっ素 15mg/L

改正政令の施行の際現にゆう出していなかった温泉を利用するものであって、一
日当たりの平均的な排出水の量が 50m3 以上であり、かつ、海域以外の公共用水域に排出水
を排出するもの)又は 50mg/L(温泉を利用するものであって一日当たりの平均的な排出水の
量が 50m3 未満であるもの又は改正政令施行の際現にゆう出していた温泉を利用するもの)

参考:温泉排水に対するほう素、ふっ素の規制の経緯

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最後に

自然由来であることを証明することはかなり困難かと考えます。

臨海地域や火山地域などで基準の0.8mg/Lをわずかに超える程度であれば行政も許してくれるかもしれません。

明らかに桁が違う場合は無理かもしれませんね。

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