廃棄物処理法の生活環境影響調査

生活環境
焼却炉

はじめに

廃棄物処理施設の設置や変更を行う場合に必要になる生活環境影響調査について確認していきます。

対象としては廃棄物処理法に関わるものになります。

この記事の対象者
  • 廃棄物処理業者及びその関係者
  • 近隣住民
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廃棄物処理法とは

制定

廃掃法とも呼ばれ「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)として昭和45年12月25日に公布されました。

参考:環境省HP

目的

目的は以下の通りとなっています。

目的

この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

一般廃棄物と産業廃棄物

廃棄物には一般廃棄物と産業廃棄物があります。

それぞれの違いは大まかに以下の様になります。

一般廃棄物と産業廃棄物の違い
  • 一般廃棄物
    産業廃棄物以外のもの
  • 産業廃棄物 
    事業活動により排出されるもの
    但し、事業活動に伴う廃棄物がすべて産業廃棄物ではない

主に一般廃棄物は市町村が処理しています。

産業廃棄物は産業廃棄物処理業者が企業等と契約して処理しています。

この時の産業廃棄物処理業者が保有している施設が産業廃棄物処理施設です。

中間処置と最終処分場

処理施設は中間処理と最終処分場があり、中間処理では以下のことが行われ廃棄物を処理しやすくしています。

中間処理の内容
  • 焼却
    廃棄物を焼却処理する
  • 溶融
    焼却処理した燃え殻を融かす
  • 破砕
    廃棄物を砕く
  • 選別
    リサイクルできるものを選別する
  • 脱水
    汚泥などから水分を取く

最終処分場の種類

最終処分場にも種類があり以下のように区分されております。

最終処分場の種類
  • 安定型
    環境汚染がないもの
  • 管理型
    環境汚染の懸念があるもの
    分解・腐敗・汚水の発生がある
  • 遮断型
    環境汚染がある
    有害物質を含む

全国には以下の廃棄物施設数があります。

・中間処理施設数 19,090件

・最終処分場数 1,631件

参考:産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(平成30年度実績等)について

この中間処置施設及び最終処分場の設置及び変更を行う場合に手続きが必要になります。

この時の手続き内容の一部に生活環境影響調査が含まれます。

生活環境影響調査とは

施設の設置者が周辺地域の生活環境に及ぼす影響をあらかじめ調査し、その結果に基づいて地域ごとの生活環境に配慮したきめ細かな対策を検討し、施設の計画をするめるものです。

配慮のポイント

配慮するポイント
  • 周辺地域の範囲
    設置する施設により異なる
    生活環境の項目により異なる
  • 生活環境の項目
    設置する施設により異なる
  • 地域ごとの生活環境に及ぼす影響
    都市、住宅地や農村地域などにより異なる

参考:環境省-廃棄物処理施設生活環境影響調査指針

調査の対象範囲

調査の対象範囲は選定する調査対象物質によって異なります。

調査対象地域
  • 大気質、悪臭としての煙突の排ガスは、施設の規模煙突の高さごとに1km〜10kmの範囲
  • 騒音、振動は、施設から発生する騒音距離減衰式等により相当程度変化すると考えられる地域であって、人家等が存在する地域として敷地境界からおおむね100メートルまでの範囲
  • 搬入車両は、1km〜2kmの搬入ルート
  • 施設からの悪臭の漏洩による影響については対象施設周辺の人家等が存在する地域
  • 水質について排水を河川に放流する場合は、排水が100倍に希釈される地点を含む流域
  • 最終処分場の場合は、地下水の水や流動状況について調査する。当該地域の地形、地質、地下水、水像の状況に加え水利用の状況(井戸、河川等)を勘案して設定する。

調査する生活環境項目

生活環境影響要因として調査する項目は施設ごとに異なります。

主な調査項目は以下の通りになります。

大気環境

大気環境としては、大気質・騒音・振動・悪臭が設定されています。

大気環境
  • 大気質
  • 騒音
  • 振動
  • 悪臭

大気質

大気環境の生活環境の要因としては以下のものが考えられます。

大気環境影響要因
  • 焼却施設の煙突排ガスの排出
  • 廃棄物運搬車両の走行
  • 最終処分場における埋め立て作業

大気質の調査項目は以下の通りになります。
参考までに毒性の情報及び環境基準値なども示しています。

大気質の調査項目
  • 二酸化硫黄
    毒性は、呼吸器を刺激し、せき、気管支喘息、気管支炎などの障害を引き起こします。
    0.5 ppm 以上でにおいを感じ、30-40 ppm 以上で呼吸困難を引き起こし、100 ppm の濃度下に50〜70分以上留まると危険とされています。 400 ppm 以上の場合、数分で生命に危険が及びます。
    環境基準値は、1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であること。1時間値が0.06ppm以下であること。 二酸化硫黄(SO2) 1時間値の1日平均値が0.04ppm以下であり、かつ、1時間値が0.1ppm以下であることとされています。
  • 二酸化窒素
    毒性は、血液中のヘモグロビンと結合し、血液の酸素運搬能力を低下させるほか、粘膜刺激性を持ち呼吸気道及び肺に対して毒性を示します。 また、二酸化窒素は冬に濃度が高くなる傾向があります。 一酸化窒素は二酸化窒素に比べその毒性は弱いとされています。
    環境基準値は、1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であることとされています。
  • 浮遊粒子状物質
    毒性は、高濃度の粒子状物質(PM)は呼吸器疾患やガンなどと関連があると考えられています。
    環境基準値は、(1) 日平均値が 0.10mg/m3 以下であること。 (2) 1時間値が 0.20mg/m3 以下であること。 ある地点における浮遊粒子状物質の測定結果が環境基準に適合したかどうかという「環境基準の評価」については、一年間で得られたすべての日平均値を対象として評価します。
  • 塩化水素
    毒性は、腐食性の強い物質 : 皮膚、眼、鼻、喉、呼吸器系粘膜に激しい痛みを及ぼす : 塩化水素は人畜に有害な刺激性腐食性のある有毒ガスであり、 大量に吸入すると中毒死します。
    環境基準値はなく、目標環境濃度として0.02ppmが設定されています。
    これは、煙突などの排出口から規制基準内の塩化水素が排出された場合、拡散条件が悪い場合でも満たす濃度として設定されています。
    参考:環境省-大気汚染防止法に基づく窒素酸化物の排出基準の改定等について
  • ダイオキシン類
    毒性は、ダイオキシンは非常に毒性が強く、生殖や成長面の問題を引き起こす可能性があり、免疫システムやホルモンに障害をもたらし、発がん性もあります。
    環境基準値は、0.6pg-TEQ/m3以下と設定されています。

騒音

騒音については以下のものが対象になります。

騒音の環境影響要因
  • 施設の稼働
    焼却施設の施設
    最終処分場における浸出液処理設備など
  • 廃棄物運搬車両の走行
  • 最終処分場における埋め立て作業

騒音の調査項目は以下の通りになります。

騒音の調査項目

振動

振動については以下のものが対象になります。

振動の環境影響要因
  • 施設の稼働
    焼却施設の施設
    最終処分場における浸出液処理設備など
  • 廃棄物運搬車両の走行
  • 最終処分場における埋め立て作業

振動の調査項目は以下の通りになります。

振動の調査項目
  • 時間率振動レベル
    住宅周辺及び敷地境界などを対象として振動規制法の規制基準との比較を行う。
    振動には環境基準の設定がないため、振動規制法の規制基準を準用します。
    参考:環境省-振動規制法の概要

悪臭

悪臭については以下のものが対象になります。

悪臭の環境影響要因

悪臭の調査項目は以下の通りになります。どちらの項目を用いるかは行政の規制により異なります。

悪臭の調査項目
  • 特定悪臭物質
    機器分析により濃度を算出し、悪臭防止法の規制基準との比較を行う
    敷地境界を対象とした1号規制の22物質
    排出口を対象とした2号規制の13物質
    排出水を対象とした3号規制の4物質
  • 臭気指数
    臭気判定士管理のもと、嗅覚検査で合格したパネラーが臭いの有無を自らの嗅覚を用いて判断して算出、悪臭防止法の規制基準との比較を行う。
    対象物質が限定的でないため、幅広く用いられる。

参考:環境省-悪臭防止法の概要

水環境

水環境としては以下の項目が設定されています。

水環境
  • 水質
  • 地下水

水質

水質については以下のものが対象になります。

水質の環境影響要因
  • 施設排水の排出
    公共用水域への排出を行わない場合は除く
    例えば下水道など
    地下浸透は必要になる。
  • 最終処分場における施設からの浸透水の流出、または浸出液処理設備からのの処理水の放流
  • 地下水は、最終処分場について、地下水の水位、流動状況の変化、それに伴う利水面等への影響があげられる。地形・地質、水象等の特性及び地下水の利用状況を踏まえて、地下水の流れに係る影響を受けるおそれがある場合に対象となる。

水質の調査項目は以下の通りになります。

水質の調査項目
  • 生物化学的酸素要求量(BOD)
  • 化学的酸素要求量(COD)
  • 浮遊粒子状物質(SS)
  • ダイオキシン類
  • その他必要な項目
    全窒素
    全リン
    水道水質基準項目(最終処分場)
    環境基準の健康項目(最終処分場)

地下水

地下水は以下のものが対象になって来ます。

地下水の環境影響要因
  • 地下水
    最終処分場について、地下水の水位、流動状況の変化、それに伴う利水面等への影響があげられる。地形・地質、水象等の特性及び地下水の利用状況を踏まえて、地下水の流れに係る影響を受けるおそれがある場合に対象となる。

調査項目は周辺の利水状況に応じて以下のものが対象になります。

地下水の調査項目
  • 周辺の利水状況
    飲用井戸があるか?
    農地用に使用している井戸などがあるか?
  • 地下水の水位
    季節変動を考慮する
  • 埋め立てによる流動状況の変化
    地下水の流れを把握
    トレーサー物質などを利用

参考:一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令

最後に

廃棄物処理施設は日常生活にとって重要ものですね。
日本各地に設置され、日々運用されていると考えます。

産業廃棄物処理施設が身近に出来るのは印象がわるですが、適切に管理されれば影響は少ないと考えます。

私たちの出す廃棄物を最後に処理してくれる、産廃施設で働く人や周辺住民に感謝をしながら運営を見守っていきたいですね。

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