はじめに
その場で濃度が知りたいと思ったことはありませんか?
化学物質の濃度を測る時には、検体を採取して分析が必要ですね。
採取した検体を持ち帰って分析室で分析する必要があります。
一般的な化学分析では、煩雑な手順や高価な分析が必要です。
これを省略してその場で濃度が分かるようにしたのが検知管です。
最も身近なのは飲酒運転の時の血中アルコール濃度の検査ではないでしょうか。
これは検知管を用いてアルコールの呼気中の濃度を測ります。
飲酒運転のアルコールの検知管というのは全国で統一されているそうです。
北川式の検知管が主流って話を聞いたことがあります。
検知管はガステックという会社も作っており国内ではこの2社が市場を占有しているとみられます。
原理
検知管は、ガラス管の中の検知剤に空気を通すことによって色が変化することで濃度を判別する仕組みになっています。
検知剤はシリカゲルなどに薬剤を染み込ませています。
この検知剤が肝になっています。
検知管はメーカーの方でなまものとも呼ばれています。賞味期限や消費期限があるということですね。
この検知剤に検知器という手引のポンプを用いて空気を通すことで変色させます。
最近のポンプは真空式ではなく連続吸引式のものも普及してきております。
手動式は一般的に短時間、自動式は長時間に測定に向いています。
当然、気圧、温度、湿度などによってポンプで吸引する空気の量は変わってきます。そのため表示された濃度は補正が必要です。
この時検知管の表面に刻まれている目盛を読むことにより濃度を判別します。
採取量を変更することにより目盛範囲を変えることもできます。例えば採取量を少なくした場合は目盛の2倍と読めるなどです。
検知管法の規格
1985年(昭和60年)に酸素欠乏症防止規則で硫化水素の測定が義務化されました。
この時、硫化水素の測定が義務化されました。
その測定方法として検知管法が指定されたことから規格化(JIS T 8204 検知管式硫化水素測定器)されました。
国際規格(ISO 17621)は2015年に制定されました。ただしこの適用範囲は作業環境雰囲気として限定されています。
JISと国際規格は評価基準が違うので目的に応じて使う必要があります。
メリット
検知管を使う場合のメリットは以下のようになると考えます。
- その場で測定結果がわかる
- コストが安い
- 操作が簡便である
デメリット
一方で以下の点はデメリットと考えます。
使用にあたって注意すること
- 機器分析に比較して精度が低い
- 妨害物質がある場合読み値に影響が出る
- 変色が分かりにくい
- 濃度が読み取りにくい
検知管の使用にあたって注意することをあげていきたいと思います。
保存条件
検知管には冷蔵庫保存は冷暗所保存というものがあります
これらを使用するときは常温に戻す必要があります
検知管は化学反応を利用していますので中の検知剤が冷えた状態だと反応しにくいと言うデメリットがあります。
また高温で保存されたものは検知剤が劣化していますので使用を控えた方がいいと思います。
使用する際にあまった検知管は、常温に戻した状態でまた冷蔵庫に戻しても問題ないとは言われております。
温度の影響
当然温度によっても影響があります。
ポンプにより、気体(空気)を採取するのですが、この気体は温度により体積が変化します。
この補正を行います。
ただこれは検知管ごとに補正値が示されておりますのでこちらを利用すると良いと考えます。
湿度の影響
検知管によっては影響を受けるものがあります。
ただし薬剤については検知管の反応する前段階において除湿剤や反応原料で対処されていることがあります。
また湿度の影響が取り除けない場合は補正表として示されています。
採取器の漏れ
検知器や採取器の漏れについては確認する必要があります。
現場でしか確認はできないのですが漏れていれば濃度は当然低くなります。
確認する方法は真空法があります。検知器に開封していない検知管を挿して吸引した時漏れがないかを確認するということです。
漏れがなければレバーを引いてもすぐに戻りますね。
気圧の影響
温度と同様に気圧により、気体(空気)の体積も変化します。
気圧が低いと吸引量が減りますね。
気圧の影響を考慮するためには気をつけよう持参する必要がありますね。
補正には補正表を用います。
廃棄に関して
有害物を含んでいる時間もあります。
鉛や水銀を含んでいるものもあります。
説明書をよく読んで廃棄には注意してください。
最後に
検知管はその場で濃度がすぐに分かり操作も簡単で扱いやすいです。
私もその場の状況に応じてよく使っております。
ただしそこで得られた濃度が必ずしも正確とは限りません。
簡易である分、その原理や特性を理解することが必要です。
妨害物質や他の影響を考慮して判断していく必要があります。
これまでのバックグラウンドのデータがある場合は有効性が高いと考えます。
他の測定分析方法なども絡めて傾向を知るというのが有効な使い方ではないかと思います。
すぐに結果を知るということは正確な値を得ることより重要な場合もあります。
検知管を有効に使ってください。
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