はじめに
今回は実測しない定性的リスクアセスメントについて解説します。
実測する方法は定量的リスクアセスメントになります。
定量的リスクアセスメントには、作業環境測定や検知管法、個人ばく露濃度計などがあります。
実測しない定性的リスクアセスメントは簡単に実施することが出来ます。
また、これから工程を構築する場合にもどの程度の場ばく露が想定され、どの程度の対策を実施することが必要かを見積もることが出来ます。
化学物質のリスクアセスメントとは?
労働者と化学物質使用する事業者は疾病予防のためにリスクを評価する義務があります。
化学物質のリスクアセスメントについては、今後2,900物質程度が対象となってきます。
大幅に増加されるため、事業者の負担は増えます。
これを化学物質のリスクアセスメントと言います。
以下の式でリスクは評価されます。
リスク=危険・有害性×ばく露
危険・有害性は物質により固有に決まっています。
ここではばく露を推定することによりリスクの大きさを推定していきます。
経緯と範囲
平成28年6月1日、労働安全衛生法が改正され、SDS交付義務の対象となる640物質ついて事業場におけるリスクアセスメントが義務付けれらました。
現在その物質数は674物質まで増えています。
今後は2,900物質まで増える予定です。
業種、事業場規模にかかわらず、対象となる化学物質の製造・取扱いを行うすべての事業場が対象となります。
製造業、建設業だけでなく、清掃業、卸売・小売業、飲食店、医療・福祉業など、さまざまな業種で化学物質を含む製品が使われており、化学物質による労働災害のリスクがあります。
労働災害低減のため、義務付けられている対象物質のみならず、対象物質に当たらない場合でも、リスクアセスメントを行うよう努める必要があります。
リスクアセスメントの対象事業者
労働安全衛生法に基づくリスクアセスメントは、SDS交付義務対象物質を製造する事業者だけではなく、取り扱う事業者も対象となっています。
化学物質を使用している事業者すべてと言うことになります。
変更や新規採用の場合には必ず実施する必要があります。
継続使用の場合は猶予されています。
手順
対象となるリスク
労働安全衛生法に基づくリスクアセスメントにおいては、設備・機器の爆発や引火などのおそれ(化学物質の危険性に基づくリスク)と、労働者の健康に悪影響をおよぼすおそれ(化学物質の有害性に基づくリスク)の両方がリスクアセスメントの対象となります。
リスクアセスメントとは
労働安全衛生法では、化学物質などによる危険性・有害性を特定し、その特定された危険性・有害性に基づくリスクを見積もることに加え、リスクの見積もり結果に基づいてリスク低減措置(リスクを減らす対策)の内容を検討する一連の流れをリスクアセスメントと定義しています。
リスクの見積もり方
化学物質の危険性のリスクを見積もる場合、爆発や引火が生じたときの被害の大きさとその発生確率からリスクを見積もる方法などが知られています。
リスクの見積もり方は実測する方法のほか計算などを推定する方法が認められています
既存の施設の場合は実測する方法が可能です。
これを定量的手法と言います。
一方、新規工場などは使用量などから計算を行って推定する方法しか用いることはできません。
一方こちらは定性的手法と言います。
このどちらの手法を用いるかは、事業者にて判断する必要があります。
今回はこの定性的手法について解説していきたいと思います。
今回対象としたのは、基本的に有害性に関しての定性的手法に限定します。
クリエイトシンプルについては、工程は考慮されませんが危険性についても評価出来ます。
定性的手法の種類
厚生労働省版-コントロールバンディング
概要
ILO(国際労働機関)が中小企業向けに作成した作業者の安全管理のための簡易リスクアセスメントツールをわが国で簡易的に利用できるように厚生労働省がWeb システムとして改良、開発したもの。液体・粉体作業用と主に粉じん則に定める粉じん作業用の2つのシステムあり。化学物質の有害性情報、取扱い物質の揮発性・飛散性、取扱量から簡単にリスクの見積もりが可能。
平成31年3月から、「液体・粉体作業」でもハザードレベルとして許容濃度を選択することが可能になりました。
コメント
最も日本では普及してる方法ではないでしょうか。
但し、有害性を高く見積もるためリスクが過大評価されます。
操作の簡単なため、導入しやすいと思います。
リスクを評価するには向いているのですが過大評価のため改善策の実行までは至りにくいです。
今後は、作業条件(換気や作業時間、作業頻度など)の効果も反映できるクリエイトシンプルに変更した方がよいと考えます。
リスクアセスメント導入から数年が経ちましたのでこちらの手法をやっているものを順次他の手法に帰ることも考えて行った方がいいと思います。
作業別モデル対策シート
概要
主に中小規模事業者など、リスクアセスメントを十分に実施することが難しい事業者を対象に、専門性よりも分かりやすさや簡潔さを優先させ、チェックリスト、危険やその対策を記載したシート。リスクレベルは考慮せずに作業毎に代表的な対策を記載。平成31年3月に粉じん作業を中心に拡充、更新を行った。
コメント
日本で多く行われている作業別にシートが作成されています。
チェックリストや事故事例、有害性情報対策など必要なことが盛り込まれています
必要事項が盛り込まれていますので非常に利用しやすくなっております。
印刷してチェックするだけでリスクの評価になりますので導入しやすいと思います。
コントロールバンディング初期導入する時にはいいと思います。
CREATE-SIMPLE
(Chemical Risk Easy Assessment Tool, Edited for Service Industry and MultiPLE workplaces;クリエイト・シンプル)
概要
•CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)
(Chemical Risk Easy Assessment Tool, Edited for Service Industry and MultiPLE workplaces)
•サービス業などを含め、あらゆる業種にむけた簡単な化学物質リスクアセスメントツールです。
•ばく露限界値(またはGHS区分情報に基づく管理目標濃度)と化学物質の取扱い条件等から推定したばく露濃度を比較する方法
•ばく露限界値から算出した経皮ばく露限界値と取扱条件等から算出した経皮吸収量を比較する方法により、経皮吸収による有害性のリスクを見積もる。
(現状では経皮吸収のリスク評価は主流かも)
特徴
•測定しない定性的な方法
•大量(数kL、数トン)から極少量(数mL、数g)まで対応
•選択肢から回答を選ぶだけ
•リスク低減措置(局所排気など)の影響も考慮
→改善前に推定できる
•コントロール・バンディングでは考慮していない作業条件(換気や作業時間、作業頻度など)の効果も反映 吸入による有害性リスクだけではなく、経皮吸収による有害性リスクや危険性についてもリスクの見積もりが可能。
手法
•(有害性)
英国HSE COSSH essentialや米国NIOSH 「A Strategy for Assigning New NIOSH Skin Notations」(2009)などを踏まえた吸入及び経皮吸収による有害性リスクを見積もる手法。
•(危険性)
危険性に関するGHS区分情報と取扱条件(着火源の有無等)を踏まえて危険性リスクを見積もる手法。
•ばく露限界値(またはGHS区分情報に基づく管理目標濃度)と化学物質の取扱い条件等から推定したばく露濃度を比較する方法。
注意点
•短時間のばく露による健康影響は対象外。
→ 濃度基準値には短時間ばく露濃度が設定されてるものもある
•何らかの理由によりばく露が大きくなるような作業については、リスクを過小に見積る可能性がある
→局所排気などの故障、吸引不足、作業者の姿勢、気流の影響など
•危険性については、プロセスについては対象外
→工程や方法についての危険性は、検討対象にしていない
~全てのリスクを評価し、網羅するものではない~
コメント
コントロールバンディングより詳細な情報を含めることができる予測方法です。
有害性及び危険性についても評価できることとなっております。
業種別のリスクアセスメントシート
概要
化学物質を取り扱う3業種の具体的な作業と代表的取扱い物質を反映したリスクアセスメント支援シート(中小規模事業場での使用を前提)
コメント
先の作業別シートの詳細版となっております。
こちらもシートを記入する方法となっておりより詳細な評価となっております。
ECETOC TRA
概要
欧州REACHに基づく化学物質の登録を支援するために開発された、定量的なリスクアセスメントが可能なリスクアセスメント支援ツール。欧州化学物質生態毒性および毒性センター(ECETOC)が開発。
コメント
利用後にコメントします。
独EMKG定量式リスクアセスメントツール
概要
ドイツ労働安全衛生研究所(BAuA)が提供するリスクアセスメントツール。
コメント
利用してからコメントします。
最後に
化学物質のリスクアセスメントを始めると結構奥深いです。
まだまだ分からないことが多いですが少しずつ進めていきたいと考えております。
コメント