アスベスト調査

はじめに

2023年(令和5年)10月1日からは、有資格者による、アスベストの事前調査・分析が義務化されます。
大気汚染防止法の改正により、2021年(令和3年)から3回に分けて、毎年、段階的に施行されております。
この記事では、アスベストの概要と調査・分析について解説していきます。

この記事でわかること
  • アスベストの基本事項
  • 調査する人の資格
  • 分析する人の資格

アスベストとは?

アスベスト(石綿)は、自然界に存在する鉱物繊維で、使い勝手が良いため身近な工業製品に多く利用されています。

種類

鉱物であり、その種類は、6種類ほどあります。
化学組成が異なっております。
Mg2+に富むのがトレモライトで、Fe2+が一定量以上に増えるとアクチノライトとなります。
主なものは、クリソタイルと呼ばれるものになります。
アモサイト・クロシドライトが次に多く、トレモライトなどは天然鉱物中に不純物として含まれていることがあります。

引用:建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(令和3年3月)

大きさ

石綿は粉砕した時に縦に裂けて、次々に細い繊維になります。
白石綿と言われるクリソタイルの繊維の直径は、0.02〜0.04 μmです。
茶石綿・アモサイトや青石綿・クロシドライトと言われる角閃石族の石綿の繊維の直径は、0.1〜0.2 μm です。
ヒトの髪の毛の直径およそ40μm と比べて非常に細く、最大2000分の1であり、肉眼では見ることが出来ません。

健康への影響は?

このような直径が非常に小さい繊維は、長くても呼吸と共に人の肺に入る吸入性の粉じんとなり、肺胞にまで到達します。
石綿粉じんを吸入することにより、主に次のような健康障害が発生するおそれがあります。

  • 石綿肺
    じん肺の一種で、石綿粉じんを吸入することによって起こる肺線維症です。
    せきの症状があり、重症化すると呼吸機能が低下することがあります。
  • 肺がん
    肺にできる悪性の腫瘍です。
  • 中皮腫(ちゅうひしゅ)
    肺を取り囲む胸膜や、腹部臓器を囲む腹膜等にできる悪性の腫瘍です。
  • 良性石綿胸水
    石綿ばく露によって生じる胸膜炎(胸の痛みや呼吸困難など)です。
  • びまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)
    臓側胸膜の病変で、壁側胸膜との癒着を伴う胸膜肥厚です。

アスベスト含有建築物解体の推移

アスベスト含有建築物解体の推移についてご説明します。

輸入と解体は時間差で訪れます。
国内では鉱物標本的な量の各種石綿が全国各地にあり、ごく小規模な採掘も戦前は行われていた。
1945年以降の戦後は、年間約0.5t程度が生産されていたが、現在はその生産も中止されています。
石綿輸入実績の推移はこちらのとおりで、輸入量は、戦後、徐々に増加し、昭和36(1961)年には10万tとなりました。
昭和49(1974)年が最大の35万tで、それ以後平成元年頃までは20~30万tで推移したが、その後、徐々に減少しました。
平成16(2004)年10月の労働安全衛生法による石綿含有建材、摩擦材、接着剤の輸入、製造、使用の禁止に伴い、平成17(2005)年には大幅に減少しました。
更に平成18(2006)年9月からの石綿含有製品の輸入、製造、使用が禁止されたことに伴い、平成18(2006)年11月段階では石綿原綿の輸入はない状況です。
禁止にいたるここ10年間での輸入先はカナダが最も多く、南アフリカ、ジンバブエ、ロシアがこれに次いでおり、上位2カ国で総輸入量の多くを占めている。
その多くは建材として建築物に使用され、その他、化学プラント設備用のシール材、摩擦材等の工業製品等に使用されました。
使用されている多くは白石綿と言われるクリソタイルです。
アモサイトやクロシドライトも当初は使用されていましたが、毒性が高いなどの理由で使用量は少なめです。
一方、解体時期と棟数については、こちらの通りです。
2028年が解体のピークで10万棟とも言われています。

石綿に関する主な関係法令と規制の歴史

  • 1940年(昭和16年)~1970年代 輸入増加-規制なし
  • 1975年(昭和50年)特定化学物質等障害予防規則の改正
    アスベスト含有率が5%を超える場合、吹き付け作業が禁止されました。つまり5%未満であれば、吹き付け作業は許容されていたことになります。
  • 1986年(昭和61年)ILOアスベスト条約の採択
    クリソタイル(白石綿)は管理使用の対象とし、クロシドライト(青石綿) の使用と吹き付け作業の禁止を指導されました。しかし、日本では変わらず使用及び製造が続けられました。
  • 1995年(平成7年)労働安全衛生法施行令改正、特定化学物質等障害予防規則改正
    アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)の製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止されました。さらにアスベスト含有率が1%を超えるものの吹き付け作業が禁止されました。つまり1%以下の吹き付け作業やクリソタイル(白石綿)の使用は許容されていたことになります。
  • 2004年(平成16年)労働安全衛生法施行令改正
    代替が困難なものを除くすべてのアスベスト製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。しかし、重量の1%以下を含有するクリソタイル(白石綿)は認められています。
  • 2006(平成18年)労働安全衛生法施行令改正
    アスベスト含有率が0.1%を超えるものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止されました

飛散性の違い

アスベストのレベルの違いとは、飛散の危険性に合わせた作業レベルのことを言います。 レベルは、レベル1から3までの3段階に分かれ、レベル1が最も危険なレベルとなるのです。 一般的な毒性のある物のレベルは、危険性が高くなるとレベルの数値も上がるのに対し、アスベストはレベル1が最も危険なレベルとなるので注意しましょう。

事前調査とは?

2022年(令和4年)4月1日からはアスベスト事前調査結果の報告が義務化されました。
報告対象の工事内容は解体工事だけでなく、改修工事(リフォームやリノベーション等)も該当します。
アスベスト事前調査結果の「報告」の義務化 新設
2022年(令和4年)4月1日から、アスベストの事前調査結果を行政へ報告することが義務付けられました。
原則、石綿事前調査結果報告システムから電子申請で報告する必要があります。
今回新設されたアスベスト事前調査結果の報告は、石綿含有成形板等(レベル3)も対象となっていることに注意が必要です。

2023年(令和5年)10月1日以降は無資格者による建築物のアスベスト事前調査・アスベスト分析は法令違反となります。
そのため、今後は無資格者からのアスベスト分析依頼をお断りする分析機関が増えると想定されます。

事前調査(書面調査-1次調査)

事前調査(現地調査-2次調査)

事前調査(分析調査)

資格者(採取)

資格者(分析)

分析(定性分析法)

1法は、技術者が経験を積み、実体顕微鏡で観察しアスベスト繊維を見つけて偏光分散顕微鏡にてアスベストの種類を判定する。
繊維がすぐに見つかれば、判定までの時間が短く、顕微鏡のみであるため、高価な機械を必要としません。
但し、判定には高度な熟練者が必須であり、全て人間の目で確認が行われる為、熟練度によって判定が変わる可能性があります。

2法は、X線回折装置でアスベストの有無と種類を一度判定し、位相差分散顕微鏡にてアスベストの種類を判定します。
X線装置と顕微鏡で確認する為、1法ほどの熟練者を必要としません。
機械の目+人間の目を用います。
但し、判定までの時間が1法より掛かり、高価な機械が必要となります。
両方法とも、分散顕微鏡を使用するのは変わりありません。

定性分析は1法か2法のどちらかを用いて行います。
しかし、より高い精度を求めるのであれば、分けずに1法と2法を組み合わせて行えると良いと思います。

前処理で粉砕をして500μmの篩(ふるい)を通し、上に繊維状の物が残った場合は、その繊維を実体顕微鏡で観察しほぐして適宜の浸液にて偏光分散顕微鏡にてアスベスト観察を行います。この段階で、アスベスト繊維が判定できれば終了で構いません。
但し、建材のバラツキにより見つけられなかっただけの可能性もあります。
これを防ぐため、機械の目を使って判定します。
篩(ふるい)を通した試料を用いてギ酸処理液をろ過して残渣をX線回折装置で確認し、位相差分散顕微鏡で判定といった流れを踏むと誤判定が防げると考えます。
0.1%は非常に微量です。
数%含有のものは1法でも比較的容易に検出できると考えますが、微量の見落としを防ぐためには1法・2法を組み合わせるのが良いかもしれません。
但し、層別分析に見る場合は、層の検体量が少ない場合は1法で判定するしかないかもしれません。

最後に

最後までご覧頂きありがとうございます。
今後も更新して行きますのでよろしくお願いいたします。

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