個人サンプリング法って

労働環境

なぜ必要になった?

作業環境測定に令和3年4月から追加された個人サンプリング法って何でしょう?

この測定については、今までの作業環境測定の経緯についてから話していかなければなりません。

日本は今まで化学物質を規制によって管理してきました。しかし規制は後になるためリスク管理の流れが必要になってきました。

また、作業者がどれだけ有害物をばく露しているかは個人ばく露測定のが優れています。しかし、ある作業場の環境改善のためには作業環境測定のが優れています。

なぜかっていうと以下のような場合あります。

作業環境測定は、局所排気装置などの対策で環境中の濃度を低減する作業環境管理で対応出来ますが、個人ばく露測定にはそこに加え作業者の作業姿勢などの作業管理が加わってきます。

  • 作業環境測定は作業場全体の環境状態の測定
  • 個人ばく露濃度測定は作業者個々の測定

また従来の固定点の測定では見逃しがちな暴露を把握するためにも、作業環境測定の中に個人にサンプラーを装着するという方法も選べるようにしたわけです。

規制からリスク管理へ

個人サンプリング法の概要

従来法におけるサンプリングの方法

従来法は、 作業場の空気中の平均的な有害物の分布状態を把握するA測定と発散源への近接作業などによる高濃度のばくを把握するB測定から成っています。 これらの測定で行うサンプリングの方法は以下のとおりです。

A測定

有害物を取り扱う作業場を無作為に6m以下の等間隔に区切った交点にサンプラーを置いて定点で一定時間 (10分以上) サンプリングする。

B測定

発散源への近接作業等、高濃度のばく露が想定される作業についてサンプラーを置いて定点で10分間サンプリング

個人サンプリング法

個人サンプリング法による測定は、従来法に準じた形で、 作業場の空気中の平均的な有害物の分布状態を把握するC測定と高濃度ばく露を把握するD測定から成っています。

これらの測定で行うサンプリングの方法は以下のとおりです。 なお、サンプラーのセッティングが違うだけで、作業者に装着するサンプラーの種類はの従来法と同様で対象物質に応じて作業環境測定基準で指定されたものです。

C測定

有害物を取り扱う作業を行う複数の作業者の身体にサンプラーを装着して、原則全作業時間を通してサンプリング

D測定

発散源への近接作業等、 高濃度のばく露が想定される作業を行う作業者の身体にサンプラーを装着して15分間サンプリング

個人サンプリング法の特徴

作業環境の評価は、 従来法による測定結果に基づきおおむね適切にされていますが、 作業環境の空気中への有害物の発散の変動が大きい場合作業者の移動が大きく場の測定のデザインが困難な時などは適切な評価が得られない場合があります。

個人サンプリング法は、このような変動があっても作業者の呼吸域の空気を正確に測定可能で、 か つ全作業時間を通しての測定・評価が可能になり、 作業場所の有害物分布の実態を把握しやすいと考えられています。

対象になるのは?

当面対象と張るのは、管理濃度の低い物質で以下に示す特定化学物質と有機溶剤作業場等になります。

管理濃度が0.05mg/m3より低い、かつ測定下限値が1/10まで確保できるものです。

  1. ベリリウム
  2. インジウム
  3. オルトフタロジニトリル
  4. カドミウム
  5. クロム酸
  6. 五酸化バナジウム
  7. コバルト
  8. MOCA
  9. 重クロム酸
  10. 水銀
  11. トリレンジイソシアネート
  12. 砒素
  13. マンガン
  14. 有機溶剤等で発散源の場所が一定しない作業

特に有害性の高く管理濃度の低い物質などが対象

どんな場合に使うのがいい?

作業環境より作業者のばく露状況を反映したい場合

以下の場合などがこれにあたります。

  • 作業者の行動が発散源に依存する
    塗装作業など
  • 有害性が高く、管理濃度が低い物質で呼吸付近の空気環境が変動する
    上記14物質
  • 作業環境の結果と健康診断の結果が連動しない
    作業環境第1管理区分で健康診断で初見あり

誰に頼めばいいの?

基本的に測定条件の設定などは下記に示す人に頼みましょう。

従来法の有害物取扱に係る作業環境測定は、測定対象物質について登録を受けた作業環境測定士または作業環境測定機関が行うこととされております。
個人サンプリング法を採用してもその基本は変わりません。

但し、個人サンプリング法によるデザイン・サンプリングについては個人サンプリング法について新たに登録を受けた作業環境測定士または作業環境測定機関が行うこととされております。
これまでの登録だけでは測定できないこととなっています。

作業環境測定士は講習を受け、機材を準備し、作業環境測定機関として登録が必要となります。

個人サンプリング法による測定が実施できるか否かについては測定実施時期の前の適当な時期に作業環境測定機関にお問い合わせください。

また試料採取機器の装着は、原則として作業環境測定士が行います。

個人サンプリング法の登録がある作業環境測定機関

個人サンプリング法実施可の作業環境測定士

事前準備、料金は?

事前準備は?

個人サンプリング法の選択可否の判断

個人サンプリング法か従来法かの選択は事業者の任意によることとされていますが、選択に当たっては、衛生委員会等において労働者の意見も踏まえた上で十分に審議することが望ましいこととされています。 もちろん専門的なことに関しては作業環境測定士など専門家に相談されることをお勧めします。

測定実施に際しての協力および分担

個人サンプリング法では作業者にサンプラーを装着するので作業者への事前説明も必要ですし、サンプラーの取り外しや回収などについて、事業場の担当者と作業環境測定士とで事前によく打ち合わ せをしておく必要があります。

料金は?

上記の通りこれまでの測定比べ、調査時間が長くなりますし手間もかかります。
一般的には料金は上がると考えられます。

しかし、広い作業場で点在した発生源で少人数の作業者の場合、測定点数が減ることにより料金が安くなることが考えられます。

また、作業者が複数の作業場に移動しながら作業している場合も測定作業場が減り、料金が安くなることが考えられます。
作業者がほとんどいない場所を測定するよりはいいのかもしれません。

料金を減らせて実態に即した測定になることもあるが一般的には料金は上がる。しかし、作業者のばく露の実態を把握するためにも必要経費である。

結果はどうに活かしたらいい?

労働環境の調査はこれまでその空間の測定でした。
今回より作業者のばく露量を把握する測定が追加されることによりリスクの把握ができ、より良い管理が出来るようになります。

まずは個人サンプラーを実施してみよう

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